OLJ ニコンRFレンズフード誕生の物語
伝説の名玉に、再び命を吹き込む
私は以前から、クラシックレンズは単に収集して飾るものではなく、実際に使い、写真を撮るために存在するものだと考えてきました。
私とライカとの出会いは2013年。写真家の久保田芳昭氏とのご縁がきっかけでした。その後、私の関心はライカだけにとどまらず、ニコンやZUNOWなど、かつて生み出された数々の優れたレンジファインダー用レンズへと広がっていきました。
なかでも、伝説的な Nikkor 5cm F1.1 は、私のコレクションの中でも特別な存在です。
しかし、こうしたレンズを収集し、実際に使い続けるうちに、少し奇妙な問題に直面することになりました。
本来レンズを守るためのフードが、いつの間にか、守るべきレンズ以上に貴重な存在になっていたのです。
貴重すぎて使えないレンズフード
ニコンのレンジファインダー用純正レンズフードは、それ自体が非常に魅力的なアクセサリーです。
比較的壊れやすい樹脂製のものもあれば、金属製のものもあります。製造から数十年が経過した現在、良好な状態で残っている純正フードを見つけることは、年々難しくなっています。
特にNikkor 5cm F1.1の純正フードは、驚くほどの高値で取引されることがあります。
幸運にも純正フードを手に入れることができたとしても、それを日常的に使用するとなると、別の悩みが生まれます。
レンズを守るために、二度と手に入らないかもしれない貴重なフードを傷つける危険を冒す必要があるのだろうか。
私自身も、まさにその疑問に直面しました。
だからといって、これほど素晴らしいレンズを防湿庫の中にしまい込んでおくのは、もっと残念なことです。
貴重な純正アクセサリーを傷つける心配をせずに、思う存分レンズを使いたい。
それが、私の願いでした。
すべては「自分で作ろう」から始まった
答えは、実に単純でした。
気に入ったレンズフードが見つからないのなら、自分で設計して作ればいい。
私が目指したのは、ニコンの純正フードをそのまま忠実に複製することではありません。
クラシックレンジファインダーレンズが持つ独特の美しさや個性を尊重しながら、現代のアクセサリーに求められる実用性と耐久性を兼ね備えたものを作りたいと考えました。
素材として選んだのは、無垢の真鍮です。
真鍮には、手にしたときの心地よい重量感と優れた耐久性があります。そして、長年使い込むことで生まれる独特の風合いも魅力です。
黒塗装仕上げは、クラシックニコンの外観によく調和します。また、使い込むことで塗装が擦れ、下地の真鍮が少しずつ顔をのぞかせる経年変化も、楽しみの一つです。
何よりも大切にしたのは、実際に撮影する人が、日常的に安心して使えるレンズフードであること。
そこからOld Lens Junkiesのレンズフード作りが始まりました。
一つのアイデアから、四つの製品へ
当初は自分自身のために考えた解決策でしたが、やがて複数のOLJレンズフード開発へと発展していきました。
これまでに、ニコンのレンジファインダーレンズを中心とした四種類のレンズフードを開発し、製品化しました。
OLJ Type 1
主にW-Nikkor 3.5cm F1.8 Sマウント、および互換性のあるクラシックレンズ向けに設計したレンズフードです。
OLJ Type 2
伝説的なNikkor-N 5cm F1.1のために開発した、OLJ独自の反転装着機構を備えるレンズフードです。
OLJ Type 3
ニッコールのレンジファインダー用レンズをはじめ、43mmの取付ねじに対応するクラシックレンズ向けに設計した、コンパクトなレンズフードです。
OLJ Type 5
W-Nikkor 2.5cm F4 LTMなど、珍しい34.5mmのフィルターねじを採用したニコンのレンジファインダー用レンズ向けに設計したレンズフードです。
どの製品にも共通しているのは、オリジナルの機材を大切に守りながら、クラシックレンズをより気軽に、より楽しく使えるようにしたいという思いです。
特許取得へとつながったOLJ Type 2
数あるニコン用レンズフードの開発の中でも、Type 2は私にとって特に思い入れの深い製品です。
Nikkor-N 5cm F1.1は、ニコンのレンジファインダーレンズを代表する名玉の一つです。しかし、その純正フードは今や非常に希少で、高価なコレクターズアイテムとなっています。
この素晴らしいレンズの魅力を損なうことなく、安心して使える実用的な代替フードを作りたい。
その思いから生まれたのが、OLJ Type 2です。
Type 2には、使用時には通常の向きで、収納時には反転させて確実に装着できる、独自のねじ込み式反転構造を採用しました。
開発と特許審査を経て、2025年3月14日に日本で特許が成立しました。
クラシックレンズへの個人的な情熱から始まった小さな開発が、正式な特許として認められたことは、私にとって大きな節目となりました。
Type 2の生産数は、世界限定わずか88個。
日本国内向けに38個、海外向けに50個を割り当てています。
撮影する人間が、撮影する人のために作る
私は、レンズをただ飾るために集めているわけではありません。
私は、実際に使うのです。
この考え方こそが、Old Lens Junkiesの開発を最初から支えてきた原点です。
すべてのレンズフード開発は、私自身が所有し、使用する機材についての、ごく実用的な疑問から始まりました。
どうすれば、大切なレンズを守れるのか。
どうすれば、クラシックレンズ本来の美しい姿を損なわずに済むのか。
どうすれば、持ち運びや撮影をもっと快適にできるのか。
そして、どうすれば、貴重なオリジナルのレンズに一切手を加えることなく、それらを実現できるのか。
こうして生まれた製品には、私自身の好みや経験、そして昔ながらの機械的な構造への敬意が込められています。
名玉を、これからも現役で
現在、Old Lens Junkiesでは、優れたクラシックレンズをより快適に使い続けるための、さまざまなアクセサリーの開発に取り組んでいます。
ニコンのレンジファインダー用レンズフードから始まった活動は、レンズの保護、フィルター、その他のアクセサリーへと自然に広がってきました。
しかし、根底にある考え方は、今も変わりません。
素晴らしいレンズの本当の価値は、希少性や歴史、あるいは市場価格だけで決まるものではないと思っています。
そのレンズが、今でもどんな写真を生み出してくれるのか。
そこにこそ、本当の価値があるのではないでしょうか。
もしOLJのレンズフードがきっかけとなって、誰かが大切にしまっていたニッコールを再び持ち出し、撮影を楽しんでくれるのなら、私の開発は十分に意味のあるものだったと思います。
素晴らしいオールドレンズには、これからも光を受け、写真を生み出し続けてほしい。
Kenneth Min Zee(徐 民)
Old Lens Junkies 創設者
2026年10月
そして、物語は続く
ニコンのレンジファインダーレンズのために、自分自身で考えた小さな解決策。
そこから始まった取り組みは、やがて数々の名玉のために実用的なアクセサリーを開発する、より大きな挑戦へと発展していきました。
OLJの新しいプロジェクトは、いつも私自身が魅力を感じ、特別なものを作る価値があると信じる一本のレンズから始まります。
主役は、いつもレンズ。
これまでに完成した製品や、現在進行中の開発については、OLJ Projectsページをご覧ください。



































